言の葉の庭
Warning! ネタバレを含みます!
ご存知、新海誠の最新作。
最近は大成建設のCMも作っているよね。この映画にもお金を出しているようで、劇中の駅の広告に名前が出てたっけ。
いつものようにあらすじをまとめよう思ったけど、すごく野暮なのでやめてしまった。文字にしたらなんだか陳腐に見えるけど、多分この監督の作品の良さは、言いたいことをリアルに感じさせる劇中の空気感なんだと思う。だから、短い作品だし、見て欲しい。
なので、以下は自分のために話を整理することにする。
葛藤とその救済についての物語だ。
主人公は靴職人として社会に挑みたいと思っている。だから本当は高校でつまらない授業なんか聞いている場合では無いのに、と焦っている。周りの大人は、自分の夢を聞いたらどうせ叶うわけないと思うだろう、と分かっているからこそ、彼は焦っているのだ。
一方、雪見の葛藤は職場である学校を放棄していることだ。毎朝スーツを着て、今日こそは行こうと思っているのに行けない。しかし、彼女は主人公が靴職人を目指してもがいていることを知って知らず知らずのうちに共感し、惹かれていく。困難を自覚しながらも、到達しなければいけない世界に向かっていく主人公は、社会への恐怖心を和らげるような存在だったのだ。
だから、ラストで主人公に「(靴職人に)なれっこないって言えよ!」「そうやって大事なことは言わないで、自分は関係ないって顔して、一人で生きていくんだ」と言われた時に、「あの場所であなたに救われていたの」と返すことになる。そして、この言葉自体が主人公にとっての救済になる。大人という存在に、初めて靴職人という夢を追うことを認められることになったからだ。
やっぱり、文字にすると変な感じだ。
あの映画も(秒速5センチメートルと同じように)その場の空気感を楽しむものなのだと思う。そういう意味では究極的に娯楽に徹した作品なんじゃないかな。
論理的に、あなたはどう思う?といったような主張は何もなくて、ただ物語が目の前で流れていくのを楽しむ作品。もちろん、鑑賞しているあいだに、主人公に感情移入して楽しさ、切なさ、驚き等を感じるのだけど、それは主人公の感情の起伏と一緒に過ぎ去ってしまう。だから、観終わったら不思議な感じがする。何の抵抗感もなく違う世界に行ってきた、みたいな感じなのかな。
これからの梅雨の時期に新宿御苑に行きたくなった。
(ただしお酒を飲んではいけないそうです、無念)
☆☆☆