芋けんぴ農場

自称芋けんぴソムリエが徒然なるままに感想や日々の雑感を記します。頭の整理と長い文章を書く練習です。

【映画】サイコ

 

 

Warning!  ネタバレを含みます!

 

 

 

今回は言わずと知れたヒッチコックの名作、サイコ。

人間は理解できない存在を前にしたときに怖いと感じるのかな、と作品を通して気づいた。

 

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主人公のマリオンは長年勤めた会社の金を持ち逃げした旅に出ていた。大嵐の夜、彼女はノーマンという若い青年とその老母が経営する寂れたモーテルに宿泊する。そこで、かの有名なシーンと共に彼女は何者かに殺害される。

その後、横領に気付いた会社がマリオンを探しに、私立探偵をモーテルによこすのだが、探偵はマリオンの姉・ライラに「モーテルの青年に匿われているのではないか」と電話した後、殺害される。

探偵が戻ってこないことを不審に思ったライラは、マリオンの恋人のサムと共にモーテルに乗り込む。モーテルの老母がマリオンを悪く言っていたことを探偵から聞かされていたことから、サムがノーマンを足止めしている間に、ライラは老母と話をつけに、離れの屋敷に足を踏み入れ、真相に迫る。

 

 

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観客は、サスペンスらしく「誰がマリオンと探偵を殺したのか?」という謎解きをしながら観ることになるのだが、とにかく観客を混乱させる仕組みが素晴らしかった。

最初のマリオンの殺人では、結構背の高い人物であることを見せ、ノーマンが主犯なのかなと思わせる。しかし、その後彼が殺害現場に到着したとき、一瞬驚いたような表情をしつつも、淡々と遺体を処理していく。ここで既に筆者の頭は大混乱である。次に、探偵が殺された時ははっきりと老母のようなシルエットが映る。ここで、ああ、この青年は殺人狂の母親の尻拭いに慣れているのかもしれないと思い始める。

だが、その後、老母は遥か昔に色恋沙汰で心中したという情報が加わり、さらに頭が混乱することになる。

 

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そして、真相が明かされて一応全ての伏線が回収されるわけだが、最後にまさに「サイコ」な顔をした犯人の顔を見ると、理解の範疇を超えるものに対する得体のしれない恐ろしさに包まれた。

映画中盤までの犯人捜しのドキドキとは違って、内臓を舐められたような気味の悪さであった。この映画を観たのは数日前なのだが、犯人捜しのスリリングさは短期的に最高点に達してすぐに忘れ去られるのに対し、この気味の悪さ由来の恐怖感は今でも残っている。

 

シンプルでありながら名作と謳われるのは、このような異なるインパクトが計算して盛り込まれているからではないだろうか。

 

☆☆☆☆

 

 

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