【小説】夜間飛行/サン=テグジュペリ
Warning! ネタバレを含みます!
話の概要を俯瞰したいま、読むのが早すぎたかもしれない、と思った。
***
フランスから南米まで、手紙を届けるための航空便を夜間に操縦するパイロット達の話である。
飛行場の総責任者であるリヴィエールは、政治的な反対との闘いの末、この夜間飛行を行う権利を手に入れた。
彼はこの任務に対して非常に厳格だ。
「規則というものは、(略)ばかげたことのようだが人間を鍛えてくれる」
彼はどんな言い訳も認めず、例え天候不順だろうがなんだろうが飛行機の離陸が遅れればパイロットを罰する。他の任務についても同様である。こうして規律を徹底させ、職員全体を飛行に集中させる。そうでなければ、一瞬の慢心が大きな事故を生むことを彼は知っているからだ。
しかし、この仕事というものはそこまでする程のことなのだろうか。パイロット達は絶えず任地の移動を命じられるそうだ。つまり、彼らが所謂落ち着いた家庭を築くことは不可能なのである。このような個人的幸福を犠牲にしてまで価値のあることなのだろうか。
この問いに、リヴィエールは永続性という観点で答えている。個人的幸福は瞬間的なもので永続性はない。すぐに壊れうるものだ。しかし、例えばピラミッドが長い年月を経て存在するように、仕事には永続性がある。それに従事する人もまた、仕事によって永遠な存在になるのだ、と。
***
仕事については私はまだきちんとまとまった考え方を述べられる立場ではないのだけど、終身雇用などの仕事第一主義に見合う(と思われていた)リターンが無くなって来た現在、すべてに於いて仕事を優先させるというのは少なくなってきたんじゃないかと思う。
もしかしたら仕事は本当に個人的幸福とトレードオフなのかもしれないし、そうでもないかもしれない。
ただ、この話で言いたいのはそのような安い価値判断ではなくて、いわばプロジェクトXのように、如何に当事者達が情熱的に仕事を永遠のものとしているか、そしてそれはどのように達成されているか、という職員達の奮闘記だ。
この一点において、つまり夜間飛行という難問への挑戦者としての態度に於いて、リヴィエールは崇高な勝利者となるのである。
***
やっぱり、この話は仕事で難題に直面した時に自分を奮い立たせるために再読するのが良いと思われる。
今の自分では経験値も思考も足りなさ過ぎて感想を書くのが難しい。
もう一度読むときには、一切の言い訳を許さずに仕事に挑み続けるリヴィエールがきっと鼓舞してくれることだろうと思う。
***
感想を書けないという感想文になってしまったので、せめて最後に、印象深かった台詞を引用して終わる。
「あの連中はみんな幸福だ、なぜかというに、彼らは自分たちのしていることを愛しているから。彼らがそれを愛するのは、僕が厳格だからだ」p.35
「愛されようとするには、同情さえしたらいいのだ。ところが僕は決して同情はしない。いや、しないわけではないが、外面には現さない。」p.68
「部下の者を愛したまえ、ただ彼らにそれと知らさずに愛したまえ」
追記)翻訳文が非常に読みにくく、誰かに再訳してほしいなあと思った。南方飛行という短編も収録されているのだが、あまりに読みにくくて挫折した。
評価をつけるのはもう少し時間が経ってからにする。